2013年2月7日木曜日

【書籍】 松下三和夫 『構造災 科学技術社会に潜む危機』 岩波新書 2012.9


問題意識はいいとは思うが、どうも、理論と実例の説明の乖離が感じられる。このことをもっといろんな所で議論し、社会として深めてほしい。

p.3 構造災とは、科学と技術と社会のあいだのインターフェイスで起こる災害。
p.45- 構造災とは、つぎの特性が複合的に関与する、科学技術と社会の界面で発生する複合境界災害。
・先例が間違っているにもかかわらず、先例が踏襲され、問題が温存される(ロック・イン状態)
・系の複雑性と相互依存性が問題を増幅する
・小集団の非公式の規範が公式の規範を長期にわたり空洞化する
・問題への対応においてその場かぎりの想定による対処療法が増殖する
・責任の所在を不明瞭にする秘密主義がセクターを問わず連鎖する

p.178- 構造災における社会的責任配分
福島事故で無限責任が発生したが、これを社会的責任の配分の問題に有限化することが可能である。
問題は、無限責任に伴う社会的受忍の当事者が民セクター(地元民)にのみ集中し、このようなシステムを設計した官、産、学の3セクターが受忍の当事者として関与していないこと。
被災の現地に官僚、産業人、学者のうち意のある人が居住し、モニターと除染データの管理、疫学的研究、関連する地域に密着した技術開発を行うことなどは一案である。
つまり、資金とならび、産官学の各セクターから人を配置し、産官学民の各セクターがバランスよく社会的受忍を受け止める仕組みを創出、活用し、社会的受忍を地域活性化に転換するしくみをつくって、被災地域の行く末を見届けることが肝要である。

p.191- 専門家と素人をつなぐ、インタープリタやファシリテータやコミュニケータは、立場を異にする複数が多元的に競うことが必要である。

■ 書籍情報入手先   ★☆☆☆☆
  『新聞書評(2012年総括)』 毎日新聞 10.加藤陽子
所在
  県立 7F本S504マ 大学文庫080.2A.1386

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